豊鋼材工業株式会社 ~IBM iの印刷基盤刷新を目指して「UT/400-iPDC」を導入、@Tovasとの連携で納品書や請求書を電子配信

COMPANY PROFILE

本社:福岡県粕屋郡
設立:1958年
資本金:4億5000万円
売上高:175億円(2021年度)
従業員数:214名
事業内容:鉄鋼およびその他金属の加工・販売、鉄鋼およびその他金属の二次加工、販売
http://www.yutaka-steel.co.jp/

1958年に鋼板剪断(シヤリング)の専業メーカーとして創業。鉄鋼加工製品の製造販売を主力に、九州全県および山口・沖縄の拠点から、建設・自動車・船舶をはじめとするあらゆる産業分野に製品を供給している。鋼板加工のトータルコーディネーターとして、レベラー・スリット・溶断・開先・穴あけ・プレス・ベンディング・溶接・マシニング・ショット・プライマーなど、多様な設備を有機的に活用して事業を拡大している。

ドットプリンタを廃止し
基幹帳票印刷をオフィスプリンタへ

豊鋼材工業は内製型のシステム構築力を重視して、人材育成やスキル継承に注力してきた。

生産管理・販売管理・経理などの基幹システムの改修をはじめ、コンプライアンスへの要求水準の厳格化、電子帳簿保存法や電子取引の法規制、税制改正、インボイス制度への対応など、外的環境の変化に伴う多様なIT対応に自社のシステム要員で取り組んでいる。

またコロナ禍が拡大するなか、同社でもテレワークが進み、機器の手配や管理、VPNを経由した社内ネットワークへのアクセス環境の準備、テレワークに関するユーザー教育やトラブルなどに対応してきた。

これら以外にも、5250画面のWeb化をはじめ、タイムカードシステム、Excelに連携した新・受発注システム、申請書のワークフロー化や給与明細配布のWeb化、全工場でのWebカメラ設置など独自開発のシステムが多く、情報システム室は多忙な日々を送っている。

使用する開発言語/ツールはRPG、それに「Delphi/400」(ミガロ.)である。現在は情報システム室に5名のスタッフが所属している。

内製力の強みを活かし、社内ではここ数年、さまざまなシステム構築・改修が進められてきたが、とくに大きな導入効果を上げたのが、IBM iの印刷基盤の刷新である。

同社では、約30台のドットプリンタおよびラインプリンタで基幹帳票を印刷してきた。しかしドットプリンタが次々と保守期限切れを迎えるなか、後継製品への懸念、導入・維持コストや運用の効率性、ストックフォームなどの購入費といった課題を解決するため、スプールファイルをPDF化し、部署単位で設置しているオフィス複合機やレーザープリンタでの印刷に切り替えるべきとの判断が働いた。

そこで同社では、スプールファイルをPDF化して印刷するためのツールとして、「UT/400-iPDC」(アイエステクノポート)の採用を決定。2017年8月に導入し、翌2018年から本格運用を開始している。

UT/400-iPDCには、帳票をデザインするオーバーレイ機能を搭載している。情報システム室ではこれを利用して、約30種類の専用用紙を含む約100種類の帳票をカット紙に印刷するために、順次再設計していった。

運用を開始した2018年から約2年間で、ドットプリンタおよびラインプリンタは完全撤去し、全帳票の印刷をオフィス複合機およびレーザープリンタへ移行した。これによりプリンタの導入・維持コストの削減、ストックフォーム購入費の削減、業務効率の向上を達成している。

ちなみにUT/400-iPDCと同時に、数種類のオプション製品も採用した。

たとえば、利用している富士フイルムビジネスイノベーション製のオフィス複合機やレーザープリンタへ、中間サーバーを経由せずにIBM iからダイレクトに印刷するため、「UT/400-iPDC ダイレクト印刷オプション」を導入した。

また、「UT/400 Auto File Transfer」では、生成されたPDFファイルを外部のファイルサーバーにソケット通信で転送・保存しているほか、「自動印刷オプション」と連携し、ラベルプリンタへ出力している。さらに「UT/400-iPDC 自動表示オプション」を使って、クライアントPC上にPDFファイルを自動的にポップアップ表示したり、「UT/400-iPDC 外字オプション」なども導入している。

@Tovasと連携し
納品書や請求書を電子配信

さらに取引先へ郵送していた納品書と請求書をPDF化し、電子配信するために2021年6月、「UT/400-iPDC @Tovas連携オプション」を導入。帳票のWeb配信に対応するコクヨのクラウドサービス「@Tovas」の利用を開始している。

納品書や請求書の郵送ではこれまで、印刷、取引先ごとの仕分け、用紙を三つ折、切手の貼付、ポスト投函までの作業に毎日30分〜2時間程度を要していた。さらに取引先に到着するまで、1〜3日を要する。

「UT/400-iPDCを導入し、スプールファイルをPDF化した時点から、納品書や請求書を電子配信できないかと検討していました。さらにコロナ禍でテレワークが進み、出社せずに実施できる業務の在り方を考えたことが、@Tovasの採用を後押しすることになりました」と、石井裕昭監査役は語る。

石井 裕昭氏
監査役

@Tovas連携オプションの導入と同時に、スプールファイルを加工して、帳票の仕分け作業や配布作業を大幅に効率化する「UT/400-SPA」と、スプールデータからCSVファイルを抽出する「UT/400-SDP」の採用も決めた。

IBM iのスプ—ルファイルからUT/400-SPAを使って、取引先ごとに帳票を仕分けし、UT/400-iPDCでPDF化し、@Tovasへ連携する。同時にUT/400-SDPを使って、スプールファイルからCSVファイルを抽出し、それをPDFとともに@Tovasへアップロードするカスタマイズも実施。取引先側には、通知メールが送信され、ダウンロードURLよりファイルを受け取り、CSVファイルを自社の業務システムにそのまま取り込める。

運用開始から約6カ月が経過した時点で、全取引先の約65%以上がメールでの電子配信に移行した。導入前に営業担当者が実施したヒアリング結果から想定したよりも、多くの取引先が電子配信に対応しており、CSVファイルの添付も含めて高い評価が寄せられている。また営業部門からも業務の効率化に加え、テレワーク時でも実施できるようになった点が喜ばれている。

同社では約3年で初期導入費を回収できる見込みで、今後も新たな帳票を電子化するとともに、対応する取引先の比率を高めていきたいと考えている。

「今年4月にリリースされたUT/400-iPDC バージョン10.0で、ピツニーボウズジャパン社の封入封かん機への対応オプションが発表されました。電子配信化できない郵送業務がまだ残っていますが、このオプションを使えば一層の効率化を果たせるのでないかと、関心をもっています」と語るのは、情報システム室の藤野親生室長代行である。

fujino mr

藤野 親生 氏
情報システム室
室長代行

各種ワークフロー化、インボイス制度や電子手形債権への対応、既存の業務システムの見直し、現場生産計上処理のオンライン化、機器管理の向上など、同社では今後も構築案件が山積みである。さらなる戦力アップを目指し、若手技術者の育成にも一層力を入れるなど、内製力の強化に継続的に取り組んでいくとのことである。 

図表 生成したPDFファイルの活用

[本記事は、i Magazine 2022 Summer(2022年7月)掲載の事例記事を転載したものです]

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