連載コラム|探訪 Inside the IBM i ~(5)AS/400の5つの開発方針の中身

IBM iの前身であるAS/400は、シンプルさ、ソリューション、高い生産性、拡張性(成長性)、サポートの5つを方針として製品開発が進められた、と前回の末尾で記しました。今回は、この方針が具体的には何を指しているのか、『The Silverlake Project』からまとめてみます。

 

シンプルさ

「我々は、顧客がシルバーレイクを使うのに特別な専門技術などいらないように設計する。そして数千のメニューとヘルプスクリーンを用意することによって、初心者でさえ使いこなせるようなシンプルな製品とする」

ソリューション

「顧客は、シルバーレイク上で稼働するアプリケーション・プログラムが不足しているといった、過去によくあったような事態には立ち会わない。システム/36とシステム/38上で稼働するすべてのプログラムは、シルバーレイク上でも稼働する。また、我々はシルバーレイク用に約1000種類のアプリケーションを用意する予定で、さらに、他のマシンとのネットワーク機能を持たせることによって、それまでのマシンの数段上をいく環境を提供する」

高い生産性

「シルバーレイクは、開発言語、ツール、ユーティリティを備え、ソフトウェアのより速い開発と、より少ないプログラマーに対処できるようにする。また、統合されたリレーショナル・データベースを標準装備してあらゆる情報をストア可能し、検索と呼び出しができるようにする。さらに、“人工知能”的な機能を備え、人間のエキスパートが行うのと同じような、スピーディな判断が行えるように設計する」

拡張性(成長性)

「シルバーレイクは、価格1万5000ドルの超小型システムから価格100万ドル相当の超巨大システムまでをカバーする6モデルのファミリー製品としてマーケットにリリースされる。この幅は、シルバーレイクの顧客がより大きな性能と機能を必要としたときに対応できることを意味する。これによって、新しいシステムに切り換えたときの混乱や障害を回避することが可能になる。さらに、シルバーレイクは、顧客の成長に対応する、いくつかの先進的な技術を提供する」

サポート

「シルバーレイクは、内部に“エレクトロニック・クラスルーム(電子教室)”といった顧客向け機能を内蔵する。これによって顧客は、シルバーレイク自体について知る必要はなく、その使い方を簡単に学ぶことができる。これは“エレクトロニック・カスタマー・サポート”と呼ぶ機能で、このソフトウェアは随時アップデートされる。そしてさらに、シルバーレイクは自身で問題を診断し修復する機能を持つ。また、電話回線経由で、IBMのサポート要員が顧客のシルバーレイクを診断できるようにもする」

 

どうでしょうか。現在でも十分に通用する魅力的なマシン・コンセプトだと思いませんか? むしろ今まさに、シルバーレイク・プロジェクトが描いたコンセプトへ向けて、あらゆるコンピューティング・プラットフォームが向かっていると言えるかもしれません。その意味でこのコンセプトは“予言的”ですらあります。

そしてこれが、ミッドレンジクラスのマシンを利用するユーザーへの徹底した調査から導き出されたという点が、非常に重要です。なぜなら、ユーザーの本当のニーズに即して開発されたマシンは成功するということを、リリースから30年以上たつ現在も証明し続けているからです。

ところで、このマシン・コンセプトと機能をスペック数でまとめると、約2000種類にも上ることが明らかになりました。つまり、シルバーレイクは約2000種類のエンジニアリング・スペックで構成されるマシンだったのです。そこで、これらのスペックにどのような重み付けを行うか、どのような優先順位で開発を行うかが大きな問題となりました。

次回は、開発の優先順位づけをどのように行ったのかを見ていきたいと思います。

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