ボルツ株式会社 ~ブラックボックス問題の解決と後任への引継ぎ準備をSS/TOOL-ADVで推進

COMPANY PROFILE

本社:兵庫県川西市
創業:1933年
設立:1954年
資本金:4900万円
売上高:75億円(2021年度)
従業員数:218名(ほかにパート従業員42名、2022年4月)
事業内容:一般ボルト、高機能ボルト、スタッドボルト、エンジン周りパイプ、機械加工部品、冷鍛粗形材部品など
http://www.boltz.jp/

90年に及ぶ技術の蓄積と独自の冷間精密圧造技術を強みとして、エンジンボルト、シャフト系ギア、パイプ部品などを製造。社名(BOLTZ)には「最高の製品でモータリゼーションの進化に貢献し続ける」という熱い意思が込められている。

8000本のプログラムが
ブラックボックス状態

ボルツは、約90年前の1933(昭和8)年に個人経営の紡績機用ねじ製造・販売会社としてスタートした。いわば“町工場”からの起業で、現在は自動車・オートバイ用のエンジン・ボルト専業メーカーとして、国内に3工場と物流拠点、海外はインドネシアに生産拠点をもつ企業へと成長している。

この間、ダイハツ、三菱自動車、三菱ふそう、青山製作所などの大手メーカーと取引を開始し、2008年には同業会社と合併し業容を拡大してきた。

一方基幹システムのほうは、1980年代前半にNECのオフコンを導入して経理・給与・購買システムの運用を開始し、1990年代前半からは他社から譲渡されたシステム/38上で生産管理システムを開発して利用をスタート、さらに1990年代後半に導入したAS/400上で「P-Pack」をベースとする新しい生産管理システムを構築し運用してきた。また2008年の合併時には、債券・債務、財務、給与システムを再構築した。基幹サーバーは、2007年にSystem i5、2018年にPower S914へと移行している。

2006年に入社した生産管理部の坪井典剛氏(生産管理グループ ITチーム、パートナー)は、当時の基幹システムの状況を次のように振り返る。

「私はユーザー企業のシステム業務に憧れて転職し、これから開発・保守をバリバリやっていこうと意気込んでいました。ところが改修の依頼を受けて作業にかかると、設計書などのドキュメント類はまったくなく、システムの中身がわかる人も残っていなかったので、ブラックボックス相手の作業となりました。この状況は何とかしなければならないと思い、それから業務のかたわら少しずつ設計書の作成を続けてきました。しかしIBM i上に8000本ものプログラムがある中では微々たるものでしかなく、その状況は2018年にツールを導入するまで変わりませんでした」

坪井 典剛 氏

生産管理グループ
ITチーム、パートナー

プログラムが8000本もあるというのは、大手メーカーとの取引が新規に決まると、そのメーカー専用のシステムを独自に構築してきたからである。その結果、部品の品目マスターが4種類あるなど同種のプログラムが多数林立し、在庫の引当処理を行うと4つの品目マスターを同時に更新するというような複雑なプログラム構造になっていた。

「当社は代々“一人情シス”の体制だったので、歴代の担当者は目先の業務に追われて抜本的な対策を打てなかったのだろうと思います」と、坪井氏は話す。

帳票の電子化が
スムーズに進む

2015年にシステム経験をもつ金澤和広氏(生産管理グループ ITチーム)が、マンパワーの増強と定年を間近に控えた坪井氏の後継者として入社してきた(坪井氏はその後退職し、現在は「パートナー」として勤務)。これにより2名体制のシステム部門となった。「ユーザーのサポートやオープン系システムの運用・保守を担当してもらうことになり、私のほうはIBM i関連に専念できるようになりました」(坪井氏)

金澤氏の加入後、懸案事項の1つだった帳票の電子化が急速に進んだ。従来は、業務部門から坪井氏に帳票の出力依頼が寄せられ、坪井氏がデータをExcelに落として提供するという運用を続けていた。

電子化を促したのは、2017年に導入したアイエステクノポートのスプールデータ変換ツール「UT/400-SDP」である。IBM iのスプールファイルから帳票作成に必要なデータを抽出し、ExcelやCSVファイルに変換できるツールである。

坪井氏は「ユーザーにSQLを教えてデータ抽出をさせるのはとうてい無理ですが、UT/400-SDPならIBM iの知識がないユーザーでも簡単にデータ抽出の指定が行え、Excelなどで帳票を作成できます」と説明する。現在は業務部門の女性社員全員(20名)がUT/400-SDPを操作し、帳票を作成しているという。

プログラム改修時の
影響分析に威力

帳票関連の課題解決に目途がつくと、改めて基幹システムのブラックボックス問題が浮上してきた。ただしこれに関しては、Power S914への移行時にプログラム改修の効率化のために導入したアイエステクノポートの「SS/TOOL-ADV」を戦力として考えていた。SS/TOOL-ADVはIBM i上のプログラム資産を解析し、設計書などの各種ドキュメント類を自動作成できるというツールである。

坪井氏は、「SS/TOOL-ADVがとくに便利だと思うのは、フィールドに影響を与えているプログラムを即座に特定できる点です。ユーザー部門からシステムの不具合などの連絡がくると、すぐにSS/TOOL-ADVを立ち上げ、問題個所を確認できます。SS/TOOL-ADVの導入前まではIBM i付属のツールを利用していましたが、比較にならないほど早くトラブルを解決できるようになりました」(坪井氏)

IBM i上のトラブルの解決では金澤氏もSS/TOOL-ADVを使い、問題個所の特定などをサポートしている。

「SS/TOOL-ADVを使ってみて気づいたのは、RPGやCLをわかっている技術者ならば、より深く縦横に使えるツールだろうということです。RPGやCLによるプログラムの流れやアルゴリズムを理解していると、さらに細かい解析ができそうですし、SS/TOOL-ADVの操作方法などにもすぐに慣れるのではないかと思えます」と、金澤氏は感想を述べる。

金澤 和広 氏

生産管理グループ
ITチーム

今後について坪井氏は、「基幹システムの設計書類などを後継者への引継ぎ資料として整備する予定です。当社の基幹システムは膨大な数のプログラムが複雑に関係し合っているので、腰を据えた整理が必要になりますが、SS/TOOL-ADVが強力な支援ツールになると期待しています」と話す。

作業の完了期限は2024年末。坪井氏・金澤氏の両氏は、「そのためにはSS/TOOL-ADVに習熟し、使いこなせるようになることが課題です」と口をそろえる。

ただし、「問題なく完了できるはず」と、坪井氏は手応えを感じているという。SS/TOOL-ADVが資料整備と後継者への引継ぎ準備の力強い“武器”となっているようだ。

図表 ブラックボックス状態の問題と解決策

[本記事は、i Magazine 2022 Autumn(2022年11月)掲載の事例記事を転載したものです]

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