連載コラム|探訪 Inside the IBM i ~(7)初めて尽くしの短期開発、カスタマー・カウンシル、ISVへの働きかけ

1995年にスタートしたシルバーレイク・プロジェクトは、計画段階から短期開発を求められたように、プロジェクトのどのフェーズにおいても時間との戦いを繰り広げたようです。

「1988年8月までの28カ月間が、シルバーレイク・プロジェクトに与えられた時間でした。この種のプロジェクトには4年から5年をかけるのが通例で、このような短期開発は初めての要請でした。しかも、製品のコンセプトをまとめ、開発の方針を固めるのに時間がかかってしまったため、ハードウェアの開発は1年、プログラミングは18カ月間まで切り詰められることとなりました」と、『The Silverlake Project』の著者は書いています。

製品開発の短期化を実現する1つの方法は、並行開発でした。すなわち、マーケット調査 → 計画 → 開発 → 製造 → 販売/サービス → 出荷と、シーケンシャルに進行する従来の方法に代わって、計画段階で開発・製造を進めるのと並行して、販売/サービス部門でも取り組みを進め、次の開発段階でも製造と販売/サービスなどを同時進行させるという、並行開発を採用したのでした。

そして、この並行開発には、開発拠点のロチェスターだけでなく、全世界のIBMの34の拠点が協力し、分担するという体制が組まれました。日本からは、当時、神奈川県にあった大和事業所がプログラミング・サポート、滋賀県にあった野洲事業所(当時)がプログラム・ロジックの開発で参画しています(大和事業所・野洲事業所とも現在はありません)。

時間の壁を破るもう1つのアプローチは、「IBMの開発としては初めて」、外部の力を借りることでした。これについてはコンサルティング会社の利用などさまざまな取り組みが試行されましたが、中でもプロジェクト全体に影響を及ぼしたのは、「カスタマー・カウンシル」と呼ぶ、システム/36と38のユーザーを集めて意見や要望、困りごとを聞くというヒアリングの場を設けたことでした。

シルバーレイク・プロジェクトではこのカウンシルからの推奨に基づき、コラムの第5回で紹介した「5つの開発方針」(シンプルさ、ソリューション、高い生産性、拡張性、サポート)や、豊富なアプリケーション・ソフトウェアを揃える、オールイン・ワンのマシンとする、などの重要事項を決定しています

さらにもう1つの画期的な動きは、AS/400が最終的なテスト段階に入った1988年初めに、計4755台のAS/400を全世界のユーザーとビジネス・パートナーに配布し、評価と感想を募ったことでした。

そしてその結果を開発・製造部門や販売/サービス部門へフィードバックする一方、全世界のISVに対してAS/400用のアプリケーション・パッケージの開発を促すというアプローチを推進しました。従来、IBMは「アプリケーションの開発は外部ISVの自主的な判断に任せる。IBMはタッチしない」という方針を貫いてきたので、従来から方針を180度変える大転換でした。

この結果、1988年6月のAS/400発表時には、2500種類のアプリケーション・ソフトウェアも同時に発表し、「AS/400はアプリケーションが豊富」「AS/400は中堅・中小ユーザーのニーズに合致している」という評判を得ることに成功しています。

[iS Technoport]

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